まずは「アンドロメダ…(1973年)」で、「アウトブレイク」に先駆けて未知の細菌によってアメリカの片田舎で集団感染が起こり、赤ん坊とアル中の老人を例外として住民のことごとくが血液が固まって死んでしまう。監督は「サウンド・オブ・ミュージック」の名匠ロバート・ワイズ。原作がクライトンの「アンドロメダ病原体」だった。こちらは先頃〈お弔い読書〉したばかりなので、そちらの方で映画・原作あわせて感想を書くつもりだ。
ここでは「ウェストワールド」の方を紹介しようと思う。これも当時、テレビで何度も放映された映画で、もちろん繰り返し繰り返し見た記憶がある。なんといってもアイディアがシンプルでありながら、何度見ても飽きないおもしろさがある。
舞台は現代もしくは近未来。最先端の遊園地に大人も子供も楽しんでいる。遊園地ではいろいろなシチュエーションを再現した精巧なパノラマ世界が広がり、そこに入る前に入場者は設定に合わせてコスチュームを着る。世界観を演出するのはたくさんのアンドロイドたちだ。あまりに精巧なので見た目では人間と区別がつかない。ここらへんの設定は70年代の映画としては秀逸だ。だってほとんどSFXを必要としない演出ではないか。
美人アンドロイドを口説いて一夜を共にすることもできるし、思いっきり相手をぶちのめす事ができる。どうやら子供向けではなく大人たちの慰安を与えるレジャー施設のようだ。「ウェストワールド」とは、レジャー施設の名前ではなくそういったアトラクションエリアの一つの名前だったか。とにかくメインは西部劇の舞台のようなエリアだ。そこではみんな思い思いの扮装して、登場するアンドロイドのならず者を倒す。どんなに拳銃を打っても大丈夫。アンドロイドに向けると弾がでるが人間に向けて発射されないようにできている。例のアシモフの「ロボット3原則」よろしく、アンドロイドは人間に危害を加える事ができないのだ。
このならず者の中でも特に異彩を放っているのが、ユル・ブリンナー扮する名うてのガンマンだ。当時、すでに「荒野の七人」は制作されていただろうか。黒澤の「七人の侍」で言えば志村喬の役どころを演じたくらいだから、非常に精神的にも肉体的にも強いガンマンに見える。しかし、このウェストワールドではいいところを見せられない。一方的に人間たちを楽しませて打たれるしかないのだ。
ところが、ブリンナーたちアンドロイドたちが何故か謀反を起こす。打たれても倒れない、しかも人間に向けて彼らの拳銃から実弾が発射されてしまうのだ。先ほどの一夜をともにしようとした男性は美人アンドロイドに寝首をかかれる。「アンドロメダ…」同様に、この映画もブリンナーをのぞけば有名な俳優はほとんど出ていない。いや、逆に一連のホラー映画のように、心底ふるえるような恐怖を演出するには、手垢のついた人気スターなどはかえって邪魔なのかもしれない。
ああ、そうか。今振り返ってみると、これって「ターミネーター」のようなテイストもあるし、「13日の金曜日」に代表される、逃げても逃げても怪物がおいかけてくるホラーのテイストの映画の先駆けでもあったんだな。そして、これがマイケル・クライトン自身の監督作品だと言う。後年それを知ってクライトンの多才さに驚いた。いったいいくつの顔を持っているのだろう。
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