2008年11月26日

プライベート・ベンジャミン(1981年)

 高校に通うようになってから、一人で映画館に行って好きな映画を観るようになった。当然といえば当然だが、あの当時はなによりハリウッド映画ばかり観ていた。名画座が健在の時代だったから、主に池袋にある文芸座に通い詰め、日頃は日活ロマンポルノばかりかかる日勝地下で「ジョーズ」などの話題作を1本300円ぐらいで観たことを覚えている。

 この作品は70年代の映画だと思っていたが、1981年制作だった。ちょうど浪人していた頃にあたる。おそらくはめいっぱい受験勉強に明け暮れていたが、一方で気張らしにゲームセンターで「ギャラクシアン」にハマり、思う存分池袋の名画座で鋭気を養っていた時期でもあった。

 このころから単なるラブストーリーよりもハートウォーミングなラブコメが好きで、泣き笑いがあって最後にハッピーエンドになるお定まりの映画が大好きだった。つまりはまだ映画を監督やカメラマンや脚本や映画批評で観るようなシネフィルの洗礼を受けていない頃の、ふつうの高校生の観る映画をきちんと観ていたことになる。

 そのなかでもゴールディ・ホーンが特に魅力的だった「プライベート・ベンジャミン」は今でも鮮やかに記憶に残る一本だった。今の俳優でたとえればメグ・ライアンが近い。一時期のラブコメではホーンを目指しているような映画を好んで出演していた。でも、ブリッコの美意識を捨てきれないライアンに対して、ホーンは愛嬌があって何事にも捨て身になれる。そして何よりも立ち上がってきたときに見せる会心の笑顔には絶対に勝てない。

 ベンジャミンはお金持ちの家庭で何不自由なく育てられ、親がお膳立てした結婚をあげ、幸せな結婚をしたはずが、男に裏切られ、再婚したら今度は新婚そうそう夫が不慮の死を迎える。確か新婚旅行先で腹上死したんじゃなかったかな。それはともかく、とにかく親の言うことを聞いても幸せにはなれない。

 失意のときに出会った軍隊のスカウトに軍隊の素晴らしさを説明されて、世間知らずの彼女は入隊してしまう。この口八丁で騙してしまうスカウト役が、「パリ・テキサス」のハリー・ディーン・スタントンだったらしいのだが全然記憶にない。騙されたと知ったが後の祭り。厳しい軍隊生活にはついていけず、上官たちもあまりの不適格さに持て余す。そこにようやく娘の行方を探しあてた両親が迎えにくる。

 このシーンが実は前半の山場だ。自らの過保護で世間知らずに育ててしまったのは棚に置いて、母親は娘の言い分には耳を傾けずに「これからは私たちの言うことをすべて聞いていればそれでいい」と娘の人生を全否定するような事を言う。ここでベンジャミンの一念発起する姿が潔くて美しい。呆気にとられた両親を残して軍隊へと戻っていくのだ。

 そう言えば「図書館戦争」シリーズのヒロイン郁と母親との親子関係が、まさにこの映画の描かれ方にそっくりだなぁ。国が違っても母娘の確執は変わらないと考えるべきか、それとも著者がこの映画を観ていて設定をパクったか。

 そこからは、泥水すするような厳しい訓練に耐え、信頼すべき友人ができ、イヤミな優等生タイプの女隊員にきっちりと落とし前をつけて、同期では一番の優秀な二等兵に成長した。アメリカの軍隊では最下級兵の事をプライベート(private)と呼ぶ。なんて説明は、スピルバーグの「プライベート・ライアン」が製作された今となっては無用の解説だろう。

 そしてクライマックスは紅白に分かれた実戦さながらの模擬戦。あのお荷物だったベンジャミンは気のおけない仲間たちと機転を利かせた戦術で、あっという間に敵部隊を敗北させてしまう。そこで軍隊の上官に気に入られて、しかもその上官と、自分をいじめ抜いてきた女軍曹との不倫の現場を握ってしまい、ヨーロッパのNATO本部への転属をやすやすと実現してしまう。もう、終盤の展開の小気味良いことったらない。

 そしておきまりのラブロマンスがベンジャミンを待ち受けているのだが、結局はその出会いも彼女にとっては通過点。本物の「白馬の王子様」ではないと分かると、最後の最後に彼をぶんなぐって、またまた前へ前へと、自分だけの人生に突き進むのだ。

 このときのゴールディ・ホーンのクリクリっとした大きな瞳と笑顔に〈やられて〉しまったのは言うまでもない。

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posted by アスラン at 12:56| 東京 ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | 記憶の映画を探して | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめて書き込みさせて頂きます。(^o^)
レヴュー執筆の参考資料を探して彷徨ううちに
偶然、こちらのブログへ辿り着きました。
この作品、私が初めて観たのも
まだ若かりし学生時代だったので
すごい懐かしいです。♪
ウチのサイトは、ブログ形式ではなく
トラックバック機能などもないので
コメント欄へお邪魔させて頂いた次第でした。
ではでは、また立ち寄らせて頂きます。(^^)/~~~
Posted by 薄野の舞姫 at 2009年01月13日 00:19
薄野の舞姫さん、コメントどうもありがとう。返事が一月も後なので申し訳ないです。というか呆れて二度と見てもらえないかもしれないなぁと、いまさら後悔しています。

学生時代に見た懐かしい映画に対する、ただただ「懐かしい」という感情を顕わにした記事に、「懐かしい」と反応してくださった事に感謝いたします。

これに懲りずに、また立ち寄ってください。
Posted by アスラン at 2009年02月12日 02:52
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