2008年12月03日

小さな恋のメロディ(1971年)

 兄とは6歳の年齢差がある。ほんの子供の頃はチャンネル争いで喧嘩になったりもしたが、僕が小学校の高学年になる頃には、向こうは高校生だから、喧嘩することもなくなり、その代わりに一緒に遊ぶことも少なくなった。


 兄の高校時代に一度だけ文化祭に連れていってもらった記憶がある。クラスのお兄さんお姉さんから「○○の弟」だとチヤホヤされたのと、文化祭の独特の雰囲気に当てられて、気分良く帰ってきたのを覚えている。

 ちょうどそのころ流行ったのが、この映画だった。兄が好きだと言った映画だという事もあるが、その後テレビで放映されると兄と一緒になって僕も見ていた。兄が公開当時、映画館で観たのか、観たとして女の子と一緒に観に行ったのか、などは小学生の僕にはとんと関心のないことだった。ただ、兄のレコード棚にはクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングの「ティーチ・ユア・チルドレン」があったので、中学生になる頃には僕のお気に入りの一曲になっていた。

 なぜかエンディングだけはCSN&Yの曲だが、映画全編はビージーズの美しいハーモニーの曲が、時にBGMとして、時に雄弁に主人公の気持ちを代弁するメインテーマとして挿入された。そんななかでも特に、飲み屋で酒を楽しんでる父親からお金をもらって、ストリートで金魚を買って喜んでるメロディの背景に流れる「メロディーフェア」と、ダニエルとメロディが緑濃い森の中にあるお墓でデートをする印象的な場面に流れる「若葉のころ」の2曲が、まさしく雄弁に主人公たちの気持ちを語ってくれる名曲だった。ヒロインの名前が入った「メロディ・フェア」は当然ながら、この映画のために作られたと誰もが考えるだろうが、ビージーズの曲はいずれも映画のために作られたわけではなく、既にアルバムに収録されていた曲から選曲されたとあとから知った。

 物語は、まだ小学生の男の子がメロディに一目惚れしてしまうところから始まる。なかなか本人に自分の気持ちを伝えられないが、音楽室で課題を先生に披露するために控え室で待っている2人が、お互いの楽器を演奏して打ち解けてくるシーンが微笑ましい。

 先ほどの墓場のシーンでは、50年間連れ添った夫婦が一緒に眠るお墓の前で「難しいわ」と現実を語るメロディに対して、ダニエルは「できるさ、だって僕はもう、一週間も君を好きなんだから」と、しびれるセリフを吐く。2人は授業をエスケープして海岸沿いにある遊園地でデートする。戻った彼らを待ち受けていたのは、学校側の厳しい説教と同級生たちのからかいだ。ダニエルは「僕たちは結婚したい。好きだから結婚したいと言ってるのに何故ダメなんです」と校長に詰め寄る。

 メロディは優しくなだめる両親に「いつも幸せを願ってると言ってるくせに何故2人を引き裂くような事をするの?パパは私を愛してないの?誰も分かるように説明してくれないのは何故?」と困らせる。2人の主張は一見すると子供らしく同じに見えるが、一つのアパートに娘と両親と祖母の4人で暮らす生活はつましい。娘は親の暮らしぶりを見ているからこそ日頃は現実的な言葉を吐く。だからこそ逆に、このシーンで駄々をこねるメロディに、親と一緒に観客である僕らもいとおしいと思ってしまう。

 一方、ダニエルの方は見栄っ張りの母親しか姿を現さず、父親の姿は見えない。推測だが、離婚して息子に未来を託そうとする気丈な女性という設定なのかもしれない。そこに、やや悠々自適な生活ができる格差が見える。ダニエルの日頃のおとなしさ・上品さの理由が見て取れる。しかし、だからといって母親の言うなりにはならない頑なさは、おそらくは父から受け継いだに違いない。現実を乗り越えようとするロマンチックな心も、だ。

 学校をズルしてデートをした2人を同級生たちもからかう。からかいの先鋒は、ダニエルの一番の親友トムだ。トムはメロディにダニエルを取られたのが妬ましかったのだ。ここで2人はとっくみあいの大げんかをする。そこでダニエルの真剣な気持ちにトムも同級生たちも気づかされる。

 トムを演じたのはジャック・ワイルド。撮影当時なんと18歳だった。ハリポタのラドクリフ君どころの話ではない。トレーシー・ハイドとマーク・レスターはそれぞれ11歳と12歳だった。レスターはもっと幼い印象だが結構年齢がいってる。

 エンディングはクラス全員で授業をボイコットして、線路脇で2人の結婚式を挙げるシーンだ。先生たちは慌てふためき線路脇に駆けつける。そこにCSN&Yの「ティーチ・ユア・チルドレン」が流れ出す。スティールギターの魅力的なイントロから始まり、スローな4ビートのギターのストロークでリズムを刻んで、フォーク&ロックのやさしく語りかけるような歌声が響く。

 二人が無事誓いの言葉を交わしたところで先生たちが生徒を捕まえようとやってくる。逃げまどう生徒。追う先生。そこへ、毎回爆弾づくりに失敗していた秀才肌の生徒の爆弾がついに爆発する。あっけに取られた先生たちは恐ろしくなって逃げ出す。ここらへんは60年代に吹き荒れた学生運動をちらっと皮肉っているようでもある。

 トムは支線に置き去りのままのトロッコを見つけてダニエルとメロディに乗るように促す。「隣の駅についたら乗り換えるんだぞ」と叫んで見送っていく。後ろからは絶えず体罰を与えた因縁の教師が近づく。「よおし、一対一の決闘だ」と向き合うと、教師がおそれをなして逃げていく。追うトム。

 小さい体を飛び上がらせて2人が一生懸命こぐトロッコは、どんどんどんどん遠ざかっていく。カメラはクレーンの俯瞰で2人を追っていく。信じられないくらいロマンティックなエンディングだった。(惜しむらくは、なぜ「ティーチ・ユア・チルドレン」がぴったりエンドタイトルがでるところで終わるように編集できなかったのだろう。最後の最後にきてサビのリフレインを少し戻して流すのだが、どうしても音のつなぎが荒っぽくて気になるのだ。)

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posted by アスラン at 12:29| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 記憶の映画を探して | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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