2009年04月16日

サスペリア(1976年)

 先日、読売新聞の日曜版に「サスペリア」の舞台になった有名な広場の様子が描かれていた。確か、どこかの地方都市から都会にやってきたヒロインが、到着した日の夜だったろうか、人気のない裏淋しい広場に迷い込む。しかも、後ろから怪しげな気配がひたひたと付け回してくる。広場におかれた無人のテーブルやイスが寂しさを一段と演出する。よく覚えているところをみると、冒頭の一シーンだっただろうか。


 ここは昼間は観光地としてにぎわう有名な広場らしいが、日も落ちきった頃には今でも、この映画のシーンのように淋しい場所らしい。監督は、後に「ゾンビ」シリーズで名を馳せるダリオ・アルジェント。この作品が彼の出世作と言っていいだろう。この作品には続編の「サスペリア2」もある。

 と思ったら、新聞記事は意外な事実を教えてくれた。実は「サスペリア2」の方が先に作られたのだそうだ。そして、こちらがイタリアで大当たりして、その後に「サスペリア」が続いて作られたわけだ。だから、邦題はご都合主義で付けられている。

 さきほどから続編と書いてはいるが、作品の内容に関連はない。またジャンルも違っている。「サスペリア2」はサイコによる猟奇殺人を描いたミステリーだ。もちろんミステリーというには、あまりにジャンルを逸脱している。やはり「サスペリア」同様に怖い。そこらへんの目新しさ、どぎつさが本国で受けたのだろう。本作で自信を持ったアルジェントが元々やりたかったジャンルを思う存分描いたのが、この「サスペリア」だったという事情かもしれない。

 うろ覚えの記憶を補おうとあらすじを調べたら、舞台はドイツのバレエ学校になっていた。ならば、あの広場のロケ地もドイツだったか。確かめようと自宅の新聞を探したが見つからない。記事をとっておけばよかった。ヒロインはニューヨークからバレエを学びにやってくる。地方都市ではなかった。なんとなく田舎娘が集まってくるイメージがあったのだ。こう考えると、イタリア映画なのに舞台もヒロインの故郷も別の国という設定はちょっと不思議だ。

 伝統あるバレエ学校にあちこちから生徒が集まってくる。すべて年頃の女性ばかりで、ヒロインもその一人だ。バレエを志すだけあって非常に細身で、目ばかりがクリクリっと大きくて目立つ。決して美人というわけではない。過剰に神経質な雰囲気を漂わせている。まさに「ホラー」という、古くて新しいジャンルのヒロインにふさわしい。

 このバレエ学校が実は悪魔の巣窟で、経営者は悪魔に生け贄を捧げるために全国から美しい女性(処女?)を集めている魔女だった。入学してからもヒロインたち生徒には数々の奇妙で恐ろしい出来事が降りかかる。生徒が失踪したり、寝ているベッドの上に天井からウジ虫が降ってきたりする。ヒロインは何故か最後まで殺されず(というか、それがお約束なんだけれど)、悪夢にうなされながらついには校長をはじめとする学校関係者が、秘密の隠し部屋で女生徒を生け贄のために殺す場面を目撃してしまう。

 1970年代にはオカルト映画というジャンルがあって、悪魔や魔女などを信じる狂信的な人間たちに振り回される映画や、悪魔・魔女そのものを描いた映画がいろいろとあった。その中でも「サスペリア」は「エクソシスト」などのモダンな感覚とは違って、ヨーロッパの古い伝統や信仰を背景としたおどろおどろしさに満ちていた。しかも時代はヒッピーのムーブメントに洗礼を受けたサイケが流行の最先端であったこともあり、赤や青といった原色を悪魔たちの心象風景であるかのように、これでもかと画面に配置することで、非常に印象深い映像を作り上げていた。

 それと効果音。今では一部のゲームなどで当たり前のように用いられるショッキングな叫びや重低音の不協和音をホラー映画のBGMに用いたのは、この映画が最初だったようだ。特に最初に触れた夜の広場のシーンでも、ヒロインの心理的な恐怖は、顔つきやそぶりだけでなく、見ている者の心を不安にさせるコンテンポラリーな前衛音楽、それにささやきとも叫びともとれる悪魔の声だ。

 臆病なくせに「怖いもの見たさ」のミーハー根性が抜けないのだろうか。「エクソシスト」や「吸血の群れ」に引き続き、早くもホラー映画を3本も紹介してしまった。決して恐怖映画が好きなわけではない。

↓クリックの応援よろしく!
banner_02.gif
人気ブログランキング
posted by アスラン at 12:51| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 記憶の映画を探して | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。