僕が初めてゴジラと出会ったのは、もちろん映画館ではなくてテレビだった。あの名作「ゴジラ」を最初に観たとは思えない。きっと子供(というより幼児)には怖すぎるから。それよりなにより、人間の味方であるゴジラという印象を早々と持っていたから、きっとゴジラ、ラドン、モスラが宇宙怪獣キングギドラと対決する「三大怪獣 地球最大の決戦(1964年)」や「怪獣大戦争(1965年)」あたりが最初ではなかっただろうか。
ウルトラマンの放映が始まった1967年までにすでにゴジラがでる作品だけで5本もあった。それに「ラドン」や「モスラ」を加えれば、当時の幼児が観るべき怪獣映画はたくさんあった。日曜の昼下がりに繰り返し放映された初期のゴジラシリーズを繰り返し見ていた。それでもゴジラシリーズは毎年のように新作が作られて、次第に自分の欲望に自覚的になっていく少年にとっては、新作の宣伝ポスターが銭湯の中庭の塀に飾られるたびにジリジリとしたいらだちを覚えた。まだまだ当時の小学生には、映画館は高いハードルだったからだ。
ゴジラ(1954年)
ゴジラの逆襲(1955年)
キングコング対ゴジラ(1962年)
モスラ対ゴジラ(1964年)
三大怪獣 地球最大の決戦(1964年)
怪獣大戦争(1965年)
ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘(1966年)
怪獣島の決戦 ゴジラの息子(1967年)
怪獣総進撃(1968年)
ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃(1969年)
ゴジラ対ヘドラ(1971年)
地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン(1972年)
当時の板橋には、東武東上線大山駅のすぐわきに「大山文化」という東宝系の映画館があり、ゴジラ映画はすべてそこで観られた。もちろん家から歩いて行けるが、小学一年生になった1968年にはまだまだ一人で行けるところではなく、行くことも許されなかった。お金だって今の子供のように潤沢なお小遣いももたないから、行くとなると親にせびるか前もって貯めなければならない。
そうこうして銭湯のポスターを指をくわえて眺め、「ゴジラの息子」のミニラの出現に、ゴジラがオスではなくてお母さんだったことに真剣に悩んだりしていた。「ゴジラ対ヘドラ」の時はかなり真剣に観られる可能性について思い悩んだ。なにしろゴジラは、得意の放射能を口から思いっきり吐き出しながらしっぽを体の前に丸めて、空を滑空するのだ。当時流行語にもなった「公害」の化身であるヘドラとの空のチェイスシーンをぜひとも瞼に焼き付けたいと思ったが、このときもおそらく許可がでなかったのだろう。悔し涙を飲んだはずだ。
そしてついに映画館でのゴジラデビューとなった映画こそが「ゴジラ対ガイガン」だった。すでに小学4年生になっていた僕は、事前に子供向けの特撮ものを特集した雑誌を毎月買っていて、その中でも特集されていた「ガイガン」の斬新な姿に魅せられていた。宇宙怪獣らしく、目がゴーグルのように横に鋭くのびていて、頭に角があり、手は鎌型のブレイドがついている。しかも胸に回転ノコギリが装備されていて近づくものを片っ端から切断してしまう。当時一番のお気に入りだったキングギドラとはひと味違った凶暴さを体現した新怪獣の誕生だった。
ガイガンを是非とも観たい。もう、これを逃すことはできなかった。おそらくお小遣いも事前に貯めておき、映画館に行くのも怪獣映画好きの友達(好きでない男の子なんてありえないが)数人と行くことで「誰々くんだって行くんだよ」という殺し文句で母親の厳しい審査をパスしたのだった。
友達と初回から入場して観た「ガイガン」は、当時「東宝チャンピオン祭り」と呼称していたイベントの中の一本で、そのほかにも「帰ってきたウルトラマン」や「ミラーマン」それに「天才バカボン」などのアニメまで一緒に観たはずなのだけど、併映作品についてはまったく覚えていなかった。メインはやっぱりガイガンとゴジラだった。
最強だと思っていたキングギドラがガイガンの前座のような地位に格下げされた事に軽いショックを覚えながら、ガイガンの回転ノコギリに傷つけられて怯むゴジラの姿に手に汗握り、最後には勝利をおさめるゴジラとアンギラスのなかなかマニアックなタッグに大満足したのだ。ガイガンは倒されたのではなく、ゴジラに叩きのめされてキングギドラとともに宇宙に逃げ帰ったのではなかったか。当時のお約束だったが、キングギドラは毎回逃げ帰った。次の出演が約束された人気スターだったからだろう。果たしてガイガンはどうだったか。記憶は定かでない。
金星人ならぬX星人の正体がゴキブリだったというオチは、当時の僕にとっては、かなりスパイスが効いた衝撃的結末だった。あとにも先にも子供のときに映画館で観たゴジラは、この作品だけとなった。次に出会うのは大学生になって映画フリークとなってから、円谷英二の手がけた特撮映画全作品を特集してくれた、今は無き大井町武蔵野館での事になる。
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