僕は確かにこの俳優を知っている。「狂い咲きサンダーロード」で狂気にも似た雄叫びをあげてスクリーンの中を暴れ続けた主役の若者が彼だった。もう彼が「狂い咲きサンダーロード」の記憶そのものであって、それ以外のものではなくなってしまうくらい、強烈な印象を与えてくれた。それなのに、僕は当時も今もあの若者の名前を知らなかった。今や年輪を重ねて熱い狂気は押し隠してしまったが、相変わらず存在自体に「狂い咲きサンダーロード」の陰影を焼き付けた名脇役として、いつでも彼はスクリーンやテレビ画面に登場した。おじさんと呼ばれる年齢になっても、彼はやはり永遠の「怒れる青年」だった。そして、僕はこの名優の名前を知る事はなかった。
亡くなった今となって、初めて僕は彼の名前を知った。俳優・山田辰夫。もう忘れる事はないだろう。石井聰亙という希有の監督を世に送り出したのは、監督自身の狂気だっただろうし、それに応えた若き無名の役者・山田辰夫の狂気だったはずだ。
理由(2004)
クロエ Chloe(2001)
BeRLiN(1995)
「さよなら」の女たち(1987)
沙耶のいる透視図(1986)
狂い咲きサンダーロード(1980)
ざっとみて、これらの映画で山田さんの演技を見かけているはずだ。近くて大林宣彦監督の「理由」では確かに記憶がある。それ以外は脇役の運命だろうか、どの役だったかを思い出せない。残念だ。おくやみの記事にあるように「狂い咲きサンダーロード」は山田さんの出世作であり、おそらく唯一と言っていい主演作であった。この夏に追悼作品としてどこかで放映してくれないだろうか。
ご冥福をお祈りします。
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