2006年02月03日

「女は女である」「桜桃の味」「ニル・バイ・マウス」(1998年2月21日(土))

 久し振りのゴダールという事で9:45からのモーニングショーに早起き(でもないか)して渋谷に出かけた。シネセゾン渋谷で「女は女である」(no.30)を観る。

 1961年の作品だ。59年に「勝手にしやがれ」で鮮烈に長編デビューを飾ったゴダールが、あの「女と男のいる舗道」の前年に撮っている。ゴダール作品のアイドル的存在であるアンナ・カリーナと、やがて「気狂いピエロ」で共演する事になるジャン・ポール・ベルモンドが、本作で既に共演している。

 赤ちゃんが欲しいと甘える女と、いきなりの言葉に尻込みする男。現実的に物事を考える男には何故突然そんな事を言い出すのか理解できない。結婚して生活が安定したら考えよう。でも女は我慢出来ない。あなたを愛している証しが今すぐにでも欲しいのよ。

 「決して恥知らずな女じゃないわ。ただの一人の女よ」

 そう言い放つアンナ・カリーナの息を飲むような愛らしさと楽しさに満ちた作品だ。こんなに楽天的で楽しいゴダール作品は珍しい。

 ユーロスペースで「桜桃の味」(no.29)を観る。

 イランのアッバス・キアロスタミ監督の新作。

 昨年のカンヌ映画祭で今村昌平の「うなぎ」とパルムドールを分けあった作品だ。何というか本当にドキドキと心が揺さぶられるような映画だ。別に感動的な事件が何か起る訳ではない。ドキドキという意味はサスペンスに酔ったという意味ではない。最初から最後まで途切れる事のない映画的感性にときめいてしまうのだ。

 車を運転する男の横顔から映画は始まる。男は人を探してひたすら車を走らせる。乗った人にこう依頼するのだ。

 「あの穴が見えるか。明日、私の名を2度呼べ。返事をしたら穴からひきあげろ。しなかったら20杯土をかけろ」と。

 自殺の手助けを依頼された最初の若者は早々に逃げ出す。男は再び言う事を聞いてくれる人を探して車を走らす。死にたがる男の切実な願いに僕ら観客は一時も画面から目が離せない。それと同時に手助けを探す彼の心に、人恋しさとひとかけらの「生」へのこだわりを見出だす。

 依頼を受けた3人目の老人に男は念を押す。「私が返事をしなかったらどうする?」

 老人は答える。「するさ。そう信じとる」

 ひたひたと僕の心を何かが満たす。その夜、男は睡眠薬を飲んで穴に入る。果たして男は明日朝返事をするだろうか?

 恵比寿ガーデンシネマで「ニル・バイ・マウス」(no.28)を観る。

 あの「レオン」「エアフォースワン」で強烈な悪役を演じたゲイリー・オールドマンが脚本・監督をした映画だ。

 ロンドンの下町で貧しい暮しをしている労働者階級の家族を描いている。夫は失業中でヤクと酒におぼれ、妊娠中の妻に乱暴して流産させてしまう。妻は家を飛び出すが、夫は妻を執拗に追い求める。

 ヘビーな内容だが後味は悪くないレイ・ウインストン演じる夫はヤクこそやってはいるが、どん底の貧しい生活から抜け出す事が出来ず家族に温かい言葉もかけられない不器用な人間だと分かるからだ。自分の親父もパブに入り浸りで何一つ愛情を注いでくれなかった。そんな親父と同じ道をたどっている自分に嫌悪感を感じている。

 妻も元の鞘に戻る。これは愛情からなのか、行き場のないあきらめからなのか。

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posted by アスラン at 01:26| Comment(2) | TrackBack(1) | 大いなる遡行(1998年) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
TBありがとうございました。
『気狂いピエロ』はただただ好きでたまりません!

又、よろしくお願いします。
Posted by Johennes(ヨハネ) at 2006年02月14日 15:22
 ヨハネさん、コメントとTBどうもありがとう。

僕も「気狂いピエロ」は好きな映画です。ゴダールは大学生の頃に色々見ました。他に「ゴダールのマリア」「パッション」が好きです。

これからもよろしく。
Posted by アスラン at 2006年02月15日 12:42
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Tracked: 2006-02-14 00:56
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