2009年12月21日

NHKスペシャル「数学者はキノコ狩りの夢を見る〜ポアンカレ予想・100年の格闘」(2009年12月20日視聴)

 ポアンカレ予想が解けるまでの顛末を描いたドキュメンタリー。ナレーターが俳優の小倉久寛で、これは先日見た「リーマン予想」に関するドキュメンタリー「魔性の難問〜リーマン予想・天才たちの闘い〜」と全く同じだ。おそらくはスタッフも同じなのだからかもしれないが、展開まで双子と言っていいほどに似ている。

 まず難問と言われる「予想」があり、多くの数学者たちを悩ませ、少なからぬ天才数学者たちの人生を狂わせる。そして、やがては真の解決に辿り着く唯一の勝者が現れる。もちろん勝者にも苦難に満ちた人生があり、ドラマがあり、それをついに乗り越えた感動がある。となれば、「フェルマーの最終定理」や「リーマン予想」の時となんら展開が変わることがないので、定理そのものが取り替え可能な物語として新鮮味も薄れるというものだが、こと「ポアンカレ予想」に関する限りは、エンディングで読者(視聴者)の予想を大きく裏切る事になる。

 それは1時間50分の長尺のドキュメンタリーのラスト20分ぐらいで描かれることとなる。ペルリマン。旧ソビエトに生まれ、ロシアに生まれ変わってから数学者として世に出るためにアメリカ合衆国にやってきて、ついには「ポアンカレ予想」と出会う。前半では、トポロジーという革新的な数学が、従来の微積分を主流とした数学を凌駕する時代状況が描かれたのに対して、ペリルマン自身はポアンカレ予想を微積分の応用問題として取り組み、人々がトポロジーの熱からさめやらぬうちに、意表を突く形で解いてしまった。

 最後に人前で講演をした際に、誰もペルリマンのテクニックを理解できなかったというエピソードは、この「ポアンカレ予想」の歴史を彩るクライマックスとなった。

 ところが、その証明の華々しさの前後に来るはずの、人間・ペルリマン自身のドラマは、番組からは完全に欠落してしまう。なぜなら彼は数学界のノーベル賞と言われるフィールズ賞受賞を辞退し、表舞台から完全に姿を消してしまったからだ。番組のタイトルは、「森でキノコ狩りをした姿を見かけた」という噂をもとにつけられた。

 彼の論文は通常のような学会誌への投稿という形ではなく、インターネットで流布される形で、静かに広まった。決して意を決して「世に問う」と言った意気込みも野心も感じられない。ただし、番組では、あれほど快活な性格だったペルリマンが、アメリカ在住時代、ちょうど「ポアンカレ予想」あるいはそれを解く鍵となる「幾何化予想」と出会った頃から人を遠ざけるようになったと、簡単に触れている。そこに僕らは、ペルリマンの見た「ポアンカレ予想」にまつわる闇を想像するしかない。
posted by アスラン at 19:38| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | TVダイアリー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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