2012年08月22日

「館長 庵野秀明 特撮博物館」に行く(その3)

 いよいよ、短編映画「巨神兵 東京に現わる」が上映される。これが、今回のクライマックスだろうか。庵野さんがシノプシスを書き、樋口真嗣さんが絵コンテを描き上げ、全編を通して語られる言葉を、あの覆面作家・舞城王太郎が寄稿した。言葉に声を与えるのは「綾波レイ」の声優・林原めぐみだ。舞城が一枚かむきっかけは奈辺にあるのだろうか?世代は樋口さんより下ではないかと思われる。やはり庵野さんの幅広い交際関係によるものか?

 とにかく、松竹が生み出した「大怪獣東京にあらわる」という映画にあやかったタイトルを付けた本短編では、巨神兵が東京、しかも下北か吉祥寺のような風景のどまんなかに現れる。日本の特撮技術の末裔たちは、確かに円谷英二に始まるパイオニアの技術を受け継ぎながら、ぼくらが映画館のシネマスコープで、あるいはブラウン管のテレビ受像器の中に見出した記憶の中のワンシーンに、数十年をかけて培ってきたテクニックを幾重にも上塗りしていく。これに本多猪四郎さんたちの人間ドラマが特撮と交互に描かれていけば、まちがいなく僕がかつてみた特撮映画になるはずだが、それはここで望むべきものではないだろう。

 10分程度の短編映画はあっという間に終わり、次の上映を待つ人たちと入れ替わりに席を立った。これで終わりかな。満腹ではないけれど、結構楽しめたな。などと思ったら、そうではなかった。これが中盤のクライマックス。さらにさらに驚きの特撮博物館は続く。

 庵野さんと樋口さんが「僭越ながら…」という低姿勢で自らの絵コンテやシノプシスを展示している。庵野秀明コーナーでは、かのジブリの代表作「風の谷のナウシカ」で、人間の手で甦った巨神兵が、映画「アラビアのロレンス」さながらに砂丘の上から、巨体をくずおれながら、閃光と化した炎の玉をはなつシーンの手描きの原画が展示されていた。当時のジブリは相当に手が足りなかったのか、自分のような駆け出しを雇ってくれた上に、重要なシーンをまかせてくれたと、庵野さんのコメントが添えられている。なんと原画の枠外には宮崎駿氏の落書きが書き込まれていて、疲れて仮眠中の庵野さんの姿に「おそい!寝てばかりいないで早く仕上げろー!」というきつい一言。笑える…。

 その奥ではモニターの前に人だかりができていて、さきほど観たばかりの短編映画のメイキングが15分ほどにまとめられている。手品の種明かしのように、さまざまなアイディアも盛り込んだ最新の特撮テクニックの仕込みが披露される。ビルの崩落シーンの方式比べに、超高熱で一瞬のうちにとろけるビルの映像作り。「アニメはいいよな。自由に描けばいいんだから」とぼやきながらも、どうやって絵を着くっていこうかと頭を悩ます技術陣の面々は、いずれも楽しそうだ。その楽しさが、観ている僕らにも伝わってきて幸せな気分になった。

 そこから、地階からの吹き抜けになった通路にたどり着く。吹き抜けのホールに組まれたミニチュアセットが上階から俯瞰できる。セットには、あのモスラも破壊した東京タワーがくの字に曲げられていて屹立している。この一角だけはカメラ撮影OKらしく、親子連れやカップル、あるいはマニアが嬉しそうにセットに入り込んでいる。早く下におりてアレを楽しまねばと思いつつも、この俯瞰のイメージをしっかりと記憶に納めたくてなかなかに立ち去りがたい。ベンチに腰掛けて、しばし休憩だ。
posted by アスラン at 13:07| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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