2012年08月27日

「館長 庵野秀明 特撮博物館」に行く(その4)

 では、あれを見に行きますか。上階から見おろしているミニチュアセットの事だ。下に降りたら、もう夢の場所は終わりを告げるとばかり思い込んで階段を降りると、もうひと終盤が残されていた。東宝の倉庫を思わせる時代がかった扉から中に入ると、出番を終えて眠りにつく戦車や戦闘機などのミニチュアが雑然と置かれている。モニターでは「大怪獣ラドン」のメイキングシーンが映し出され、サングラスとパナマ帽でおなじみの円谷英二氏が陣頭指揮する姿がちらっと映る。きっと、ここにあるミニチュアの多くは、当時確かに一度は使われたものに違いない。出口にはキングギドラが誇らしげに僕らを送り出してくれた。

 地階では草創期の神様たちが編み出した特撮技術の原点が紹介されていく。山々を背景にトンネル直前で渋滞している車の列が見える。手前から奥に行くほどに車は極端に小さくなっていく。これも二次元芸術である映画ならではトリックだ。実際以上の遠近感を感じるように強調されている。また、CGなどなかった時代に戦闘機をつるしたピアノ線が見えないようにするために、逆転の発想を試みる。セットを上下逆さまにつくり、空と雲を下にして背面飛行の戦闘機が空側に固定されている。それを鏡で反転させた映像を撮影した。

 日本海海戦の際に戦艦や駆逐艦などの航跡を俯瞰のショットで撮るために、寒天をしきつめた太平洋を東宝撮影所の屋外プールに作ったり、キノコ雲を作り出すのに水に絵の具水を一気に入れたところをカメラを逆さにして撮影したりした。これらの手法はもはや古典すぎて、今の世代には子供だましにしか見えないかもしれない。しかし、例えば「大怪獣ラドン」のクライマックスシーンを撮影するために、阿蘇山の噴火を本物の溶鉄を使って大規模セットの山の頂上から流すなんて事は、今や安全面からも予算面からも不可能だろう。CGは映像に迫力を増すための技術というだけでなく、安易な省予算のための方便にもなっている。

 かつては、ウルトラマンのカラータイマーひとつをとってみても専門の電工さんがいた(今もかな?)。あのキラキラと不規則に輝いてみえる工夫はそれこそ手作りで、カラータイマーの中に手ででこぼこに打ち込んだ金属板を電球との間に仕込んでいた。バッテリーボックスはウルトラマンの着ぐるみの脇の部分に隠され、タイマーの点滅は2パターンに切り替えが可能だった。

 さて、夢が終わるときがいよいよ近づいた。短編映画は中盤の山場だった。庵野さんと樋口さんが、特撮の夢を引き継いだ”若手”としての気概を見せてくれた。最後の最後は、やはり真打ちに登場してもらわねばならない。飾りきれなかったフィギュアをまとめてディスプレイした部屋には、ウルトラマンや怪獣たちにまざって仮面ライダーたちも仲間入りして意表を突かれる。この部屋ではモニターが壁にはめこみになって並んでいる。東宝のゴジラを中心とする怪獣たち、大映のガメラを中心とする怪獣たち。昭和ガメラの名場面では、僕ら当時の少年たちを鼓舞した「ガメラマーチ」が流れる。

 そして映画からTVへとうつり、ウルトラマンと個性あふれる怪獣たちの対決シーンがダイジェストで流れる。劣勢をしのいだウルトラマンたちが反撃に繰り出すシーンが〈夢の終着点〉だ。BGMはもちろん「帰ってきたウルトラマン」の、あの勇壮なテーマ曲だ。この曲を聞くだけで僕らは勇気がわいてくる。冬木透さんの曲はどれもみな名曲だった。

 余韻を味わいながら、あの吹き抜けのホールに出てきた。あの上階からみたセットの手前に「巨神兵東京に現れる」のワンシーンを再現した記念撮影コーナーが設けられていて、カップルや親子連れが順番を待っている。短編映画の中で、精巧に作られたあるアパートの一室の窓の遠景に巨神兵が通り過ぎていくシーンがあった。巨神兵の位置に立つことができて、アパートの室内手間から、カメラでアングルを決めて撮影できる。僕はと一人きりなので、何もいないけれどアパートの室内の見事さを楽しむ事にした。

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 夢は終わった。ここには、もう彼ら特撮の達人たちが僕らにみせてくれた〈夢〉は、すでにない。僕らが少年時代に夢見た記憶のかけらが落ちているのみだ。ありがとう。これからもまた、古くて懐かしくて、どこか新しい夢を見せてくれる事を願って…。 
posted by アスラン at 13:00| 東京 ☀| Comment(1) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「大原麗子」で私もブログに書きました。今後ともよろしくお願いします。
Posted by 戦後史の激動 at 2012年08月30日 15:59
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