2005年06月27日

1999年1月3日(日)「あ、春」「たどんとちくわ」

 1999年最初を飾る一本は、相米慎二の久々の新作「あ、春」(no.2)。テアトル新宿で観る。

 題名からしてほのぼのとしているが、見終わった印象がまさに「あ、春が来てたんだ」という感慨につきる。

 広い庭のある日本家屋に住まう平凡な一家の風景に、浮浪者風の山崎努が訪れる。それは妻の実家に居候する佐藤浩市の死んだ筈の父親だった。父親の出現が、それまで平凡で単調だった家族の生活に波風をたて、妻である斉藤由貴の精神も不安定にさせる。

 やがて彼は春一番のように家族をかき回して逝ってしまうのだが、そこにほんのちょっとの奇跡がやってくる。それがまさしく「あ、春だ」と言える暖かさで、最後の最後にじわーと心が緩んでくる。

 佐藤浩市がちょっと仕事と家庭に疲れた働き盛りのサラリーマンを見事に演じている。CMで演じるさえないサラリーマンそのままだ。それと佐藤の母親である富司純子が素晴らしい。老いてもなお色気があるとともに、ドライブインを切り盛りするたくましさを兼ね備えた豪胆な女性をさらりと演じている。

 「あ、春」もなかなかとぼけた題名だが、シネマスクエアとうきゅうの「たどんとちくわ」(no.1)はその上をいく。

 椎名誠の2つの短編が原作だ。椎名誠と言えば昨年観た「中国の鳥人」も彼の作品が原作だ。SFとかファンタジーも書くし、今回のように不条理な作品もお得意のようだ。

 タクシーの運転手との会話が面倒臭いので、つい「たどん屋が商売」といいかげんな事を言ったがために運転手がキレて暴走を始めるという「たどん」。

 無名の作家が周囲の日常に違和感を感じ出して、おでんの屋台にちくわに見立てて置き忘れてきた自分のイチモツを取り戻そうとして居酒屋の客や主人をめちゃくちゃにしてしまう「ちくわ」。

 そして最後に双方の登場人物が交錯するシーンが楽しい。非常に荒唐無稽でおかしいが、珍しく市川準がCMディレクターらしい手法を映画に用いて現代人の日常をリアルに切り取り、それをうまく非日常へと繋げている。

 最近の市川準はちょっといいなぁ。
posted by アスラン at 19:14| Comment(1) | TrackBack(0) | 大いなる遡行(1999年) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
トラックバックありがとうございます。
私、実は『あ、春』レンタルしただけで観ていないんですよ。申し訳ないです。
また、お越しお待ちしています。
Posted by かーず at 2005年07月07日 17:31
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