2007年12月14日

ワン・オン・ワン(1977年)

 映画は読書と同様に孤独な趣味だ。ただし読書というのはいつでもどこでも場所を選ばずにできるし、本を探すためにあちこちの書店を巡るという行為がつきまとうのでアウトドアな趣味と言えなくもない。しかし映画に関して言えば、暗い映画館に2時間程度は拘束され、その間は人付き合いというものから離脱する。

 いや、もっと言えば映画を一人で見に行けば、その前後の時間も一人っきりで過ごす事になる。誰かと一緒に行けばいいのだろうが、誰かと行くと自分の趣味を貫きとおせない恨みが残る。なにより映画を見終わった時の感動が、自分とは異なる感想をもった連れの一言でぶちこわしになるのは避けたい。となると、映画好きが高じれば高じるほど、孤独な時間・孤独な一日・孤独な週末を過ごす事を余儀なくされる。

 しかし青春まっただなかの高校生ともなると、そういう姿勢は貫きぬきにくい。まだ人恋しい年頃だ。友人数人と一緒に映画を見に行くという事も、まま会った。特に陸上部の花形スプリンターだった友人を囲んだメンツで映画を見に行く時には、とにかくワイワイガヤガヤ。見に行く映画も自分の趣味などとは無縁だ。賑やかに笑えたりスカッとしたり恋してドキドキしたりする映画がいい。陸上部の友人の好みもそういう映画だった。体育会系らしく躍動感に富むジャンルが好きで、そういう映画に限ってやはり体育会系が好むような〈大人過ぎない恋愛〉が盛り込まれていた。

 「ワン・オン・ワン」はタイトルから分かる通りバスケットボールを素材にした青春映画だ(One on Oneは1対1でゴール下を争うゲーム)。と言っても近頃よくある弱小チームがコーチ・選手一丸となって優勝を目指すタイプのドラマチックなスポーツ映画じゃない。主人公の青年が挫折を乗り越えて成長していく物語だ。

 田舎の高校では花形だったヘンリーは、スカウトされて優勝が狙える大学のバスケットボール部に入部。ところが背が低いために実力を出せず空回り。大学が勉強をサポートするために派遣した女性の家庭教師ジャネットからはバスケをとったらただのダメ男だと蔑まれる。やがてコーチから見限られて奨学金を辞退するよう圧力がかかる。拒否すると手のひらを返したように特待生扱いでなくなり、成績の悪さを理由に落第させようと画策してきた。

 部活内で露骨なイジメにあったヘンリーは奮起する。その真剣な熱意を見直したジャネットは勉強の方を全面的にサポートし、二人三脚でコーチの嫌がらせに対抗する。二人はいつしか惹かれあうようになっていった。

 ついに土壇場でヘンリーは優勝決定戦にベンチ入りを果たす。正選手がケガで欠場してチャンスがまわってきたのだ。残り数分でわずかに負けている。コーチからは試合には出すが、すぐにボールは回せと念を押される。しかし一か八かで彼の真価が発揮され、次々と敵のディフェンスをかいくぐってゴールを重ねる。そしてタイムアウト間際に自らゴールを決めてチームを優勝に導く。

 翌朝コーチに呼ばれた彼は、これからも主軸として頑張ってほしいと言われるが、その場で大学をやめると告げて去っていく。ラストは恋人と1対1のボール遊びに興じるシーンで終わる。辞書を引くと「ワン・オン・ワン」にはマンツーマンという意味もある。ジャネットが勉強だけでなく人生の意味をヘンリーに個人教授するというモチーフも象徴したタイトルのようだ。

 何かにちょっと似ている。マット・デイモン主演の「グッドウィルハンティング」だ。あの作品は脚本もデイモンだったが、本作も主役ヘンリーを演じたロビー・ベンソンが脚本を書いている。バスケのシーンも吹き替えなしで見ごたえがあった。背が低くて好青年なところも共通点がある。残念ながらベンソンの方はその後は芽が出なかったようだ。

 高校時代の僕らには、こういう爽やかな青春ものが〈通過儀礼〉のように必要だった。いまだでもこの映画は、青春の痛みと気恥ずかしさを伴って僕の心の片隅に燦然と生きているのだ。

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posted by アスラン at 02:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 記憶の映画を探して | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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