調べてみるとクロスビーのクリスマス映画としては「我が道を往く(1946年)」と「スイング・ホテル(1942年)」がある。よく覚えているのはクロスビーが副牧師として派遣されて、教会の窮状を助けるために奮闘する「我が道…」の方なのだけれど、調べてみると〈ホワイト・クリスマス〉は歌われていない。映画「ホワイト・クリスマス」は「スイング・ホテル」のリメイクなので当然ながらこちらでは歌われているが、どうもあらすじを読んでもピンとこない。おそらくだが、クリスマスらしい暖かい話に感動したのと、主演のクロスビーの歌に魅せられたのとで〈ホワイト・クリスマス〉もてっきり歌われたとまたまた勘違いしていたようだ。
ところで今回記憶から取り出した映画は、クリスマスそのものを正面から題材にした映画ではない。ハリウッドの王道中の王道である〈永遠のラブストーリー〉とも言える一作「めぐり逢い」だ。こちらも2回目のリメイク作品で、一度目のリメイクがケーリー・グラントとデボラ・カー主演で題名も同じ「めぐり逢い(1957年)」だ。本当はこっちの方が大人の男女の恋という感じがして好きな映画だ。ケーリー・グラントは「シャレード」で見せた知性的な魅力に加えて、愛する事に臆病になっている翳りある中年を好演していた。
内容の良さという点ではケーリー・グラントの「めぐり逢い」に軍配があがるが、見やすさの点で今回のリメイクをオススメしたい。本作の主演はウォーレン・ベイティとアネット・ベニング。とにかくベニングが息を呑むほど美しい。1957年版「めぐり逢い」は男の魅力を見る映画だが、1994年版の「めぐり逢い」は女性の魅力に圧倒される映画になった。
ウォーレン・ベイティ扮するマイクは、アメリカンフットボールの花形選手を経てスポーツ解説者になっている。売れっ子だが少々軽薄そうだ。ベイティは「天国から来たチャンピオン」では、手違いで寿命よりかなり早く天国に連れていかれたクォーターバックを演じていて、今回の設定はそれを踏まえている映画ファンには楽しい。一方、アネット・ベニング扮するテリーは、前のリメイクのデボラ・カーと同じく歌手という設定だ。しかも同じ飛行機の隣の席になった二人は以前に面識がある。マイクはすっかり忘れていたがテリーは覚えていた。そのときの印象は悪い。最悪の出会いだ。
にも関わらず二人が運命に縛られるのは、エンジンの故障で不時着した島の奥地に住むマイクの伯母の存在だ。年老いた伯母は亡き夫の面影を胸に今も一人で生きている。その愛情の強さにテリーは心を打たれ、さらには伯母からマイクが真実の愛を求めつづけている事を聞かされる。二人を結びつける役目を果たす事になる伯母を演じているのが、かの名優キャサリン・ヘップバーンなのも、この映画のみどころだ。かつて数々のラブストーリーを自ら演じてきた彼女の重みある存在によって、前回のリメイクよりも現代的で軽薄になりがちな展開に一本芯が通った感じがする。
二人は惹かれあい、互いのこれまでの生活や互いの婚約を解消した上で、エンパイアステートビルディングの最上階での再会を約束する。何故そんな事をせずにひっきりなしに連絡をとらないのか、などと野暮な事を言ってはいけない。今も昔も、永遠のラブストーリーは当事者自ら〈すれ違い〉の足かせを抱えるからこそ、それを乗り越えた結末が美しいのだ。
マイクは大学のしがないコーチの職につき、テリーは歌手をやめて幼稚園の先生になる。すべては新しい生活のために人生をやり直す事を選ぶ。僕には、ハリウッドが奏でるはかない夢のようにも見える。現実には誰しも華やかな人生は捨てられないだろう。ずいぶんと世の中を知りすぎてしまった二人が、あえて二人だけの純愛を貫こうとする。そこがとてもいじらしい。まさに永遠のラブストーリーとして語り継がれるにふさわしい。
約束の場所に向かおうとしてテリーは交通事故に遭い、ついに二人は再会できない。しかもマイクは彼女が自分を選ばなかったと勘違いをして失意のまま、その場を離れる。
次の場面がクリスマス直前の劇場だ。テリーはかつての婚約者(なんと007のピアーズ・ブロズナンだ)と一緒にコンサートを聴きに来ている。マイクは一人だ。二人の再会はあまりに男に誤解を抱かせるようにできている。事故を知らないマイクは、席についたテリーに声をかけるだけでさびしく去っていく。マイクに連れがいないで自分に連れがいる、そのことがテリーには歯がゆい。
そしてクリスマス当日の夜。パーティーの誘いをすべて断って一人静かに自室で過ごす彼女のもとにマイクが訪れる。伯母からテリーあてのショールの贈り物を手渡しに来たのだ。「伯母様はお元気?」と話をはぐらかすつもりが亡くなったことを聞かされて、テリーは運命の残酷さと永遠の儚さを知る。あとは交わすべき言葉もない。
しかし、もはや存在しない伯母から永久の愛の証としてバトンのように渡されたショールが、二人の運命を再び寄り添わせる。ふと去り際にマイクは、彼女を描いた絵をあの約束の日に約束の場所にもっていった話をする。動揺するテリー。その絵は知り合いのレストランに譲ってしまったけれども、あるご婦人がどうしてもというので譲ったと支配人から最近聞かされた。女性は車椅子に乗っていた。
そして、つき動かされるようにマイクは部屋を探し回って隣室で絵を見つける。
「何故本当のことを言ってくれなかったんだい?」
すべてを知って優しく問いかけるマイクに
「あなたを(こんな私で)縛りたくなかった」
と涙ながらに答えるテリー。
大甘なロマンスと笑いたい奴は笑えばいい。僕はこのエンディングに弱いのだ。
【記憶の映画を探しての最新記事】




