2005年10月06日

ロバート・ワイズとは何者だったか?

 どうも不思議でしょうがない。「ウェスト・サイド物語」「サウンド・オブ・ミュージック」が同一の監督の手になるものだという事が、だ。

 
ロバート・ワイズ監督死去。享年91歳。


 同世代の監督にビリー・ワイルダーやウィリアム・ワイラーがいるが、彼らを語る言葉は多くてもロバート・ワイズがどんな監督であったかを語る言葉は少ないような気がする。

 今回の死亡記事でも、
 「職人的な質の高い作品」
 「戦争物からSFまで幅広いジャンル」
 「多様な作品」
などの文言で飾られている。

 そして何より2度のオスカー受賞。どちらもミュージカルだったこともあって「ミュージカルの巨匠」と見出しを打った記事まであったが、それは言い過ぎだろう。後にも先にも彼がとったミュージカルはこの2本だけのようだし、どちらも従来からあるエンターテイメントのミュージカルとはかなり毛並みの違った作品を撮った事は確かだから。

 そのせいなのか、記事の表現も微妙に違っていて、何故かどれも的を射ていない。

「サウンド・オブ・ミュージック」だと、

「ナチスの手を逃れるトラップ一家を描いた」(アサヒコム)
「オーストリアの壮大な自然と、修道女と子供たちの触れ合いを感動的に描き」(日刊スポーツ)
「「ド・レ・ミの歌」「エーデルワイス」などで有名な」(読売新聞)

などと書かれている。どれも帯に短しという感じだ。

 とにかくワイズは職人作家であった事は確かで、それが様々なジャンルに繋がっているし、何より2つのあまり似ていないミュージカルを作ってしまった理由なのかもしれない。

 改めてフィルモグラフィーを眺めてみると、意外と知っている作品は少ない。そして知っている映画がこれまた意外で、

 「アンドロメダ…」(1971)
 「スタートレック」(1979)

のどちらもSF映画だ。

 特に「アンドロメダ…」の方は、ミュージカル2作と同様、当時のテレビでイヤというほど繰り返し放映されたので、SFというとこれ!という刷り込みが僕の中で完了してしまっている。

 宇宙から来た病原菌に接触するとたちまち血液が凝固してしまうというSF版「アウトブレイク」で当時小学生の僕の恐怖を誘い、赤ん坊と酔っぱらいの二人だけが何故か助かるという本格ミステリー並みの謎に惹きつけられ、最後には隔離された施設の自爆装置の解除というサスペンスに本当にハラハラさせられた。あれこそがワイズの職人としての腕のみせどころだったのかもしれない。原作がマイケル・クライトン。ホントに息の長い作家だが、一言言わせてもらうと、どうしても赤ん坊と酔っぱらいだけが助かる理由が「アレ」とは納得できないんですけど…。

 ところで生涯で撮った映画が39本。オスカーの2作品が飛び抜けていて、その他の映画にビッグヒットはなかったような感じだ。いや僕の不見識なのかもしれないが。それにしても1979年に映画版「スター・トレック」を撮ってしまうところを見ると、あまり作品に対するこだわりはない監督なのかもしれない。正直ワイズ監督じゃなくても誰がやっても「スター・トレック」というブランド映画になってしまうはずだから。

 最後に2本のミュージカル映画について。

 「ウェスト・サイド物語」の方はスクリーンで見たことはなく、もっぱらテレビばかりだ。そのせいか今見ると当時はスタイリッシュと言われたはずの踊りが鼻につく。舞台ならまだしも映画であれをやられると退いてしまう。

 「サウンド・オブ・ミュージック」は10年前(になっちゃうか、もう)に銀座文化劇場で観た。「アラビアのロレンス」や「2001年宇宙の旅」などシネスコが流行していた頃の映画をリバイバル上映してくれたので大変ありがたかったが、その中で「サウンド・オブ・ミュージック」はシネスコである必要があまり感じられない作品だった。出だしの空撮による俯瞰撮影とラストのアルプス越えのシーンがシネスコに見合うシーンだが、あまりうまい撮影ではなかった。「オーストリアの壮大な自然」という記事があったが、壮大だったのはこの部分だけだ。

 けなしているようだが、その欠点があったとしても「サウンド…」はミュージカル映画史上燦然と輝く映画であることは間違いない。もちろんジュリー・アンドリュースなくしては語れない作品であることも確かである。決して美人とは言えない彼女を型破りな修道女に仕立て上げて、女の魅力ではなく中性的な女性の奮闘する姿をいじらしくみせたのは、やはりワイズ監督の手柄だろう。

 冥福を!
(「カンガルーは荒野を夢見る」2005/09/20記事より転載)
posted by アスラン at 01:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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